私は、さゆりの引き立て役だ。
自他共に認めている。
悲しいことだけど、それが現実。
高校時代から、彼女とは親友ということになっている。
卒業してからも、ずっとお友達。
独身時代は一緒に旅行に行ったりもした。
二人並んで歩けば比べられる。イヤだった。

どんなに努力しても限界ってものがある。
自分ひとりでいるならまだしも、隣に彼女がいる限り
私はずっと引き立て役でしかないのだ。
誰が見ても美人。
性格も良い。
彼女に告白した男は数知れず。
なのに、なぜか、さゆりは誰とも付き合わなかった。

「私って男嫌いだから・・・」
美人しか言えないせりふだよね。
私が言っても、男の方から嫌ってくれるってよ。

美人が言うと様になる。
「私、結婚なんか興味ないから・・・」

その言葉通り、彼女は独身だった。
バリキャリとして収入もあり人生の成功者だ。
私はといえば、平々凡々家庭の主婦。
今時めずらしい専業主婦だ。
職場結婚、妊娠出産を機に退職。
子育て中もときどきさゆりとランチに行った。

いくら親友とはいえ、バリキャリと専業主婦の会話が
盛り上がるはずもなく、お互い仕事自慢と家庭自慢を
さりげなくしつつ、でも相手を羨ましがるフリをした。
いや、本当に羨ましくねたましく、それでいて
自分が嫉妬しているなんて相手に知られたくないという
女性同士の負の感情がぶつかり合う。

そんな相手と何で会わなきゃいけないのかというと
お互い自分の幸せを相手にみせつけることを
快感としていた。それだけが生きがい。
これって完全に依存症だよね。

幸せに見せたい、見られたい。それでいて愚痴不満も
のろけ話として聞いてもらい、自分だけストレス解消したい。
みせかけだけの友情にどす黒い感情を混ぜて
自分の虚栄心を満たすのはこの人しかいないと依存している。

あるとき、一緒に食事をしながら、彼女は言った。

「このままずっと独りだと不安なんだよね。」

「何が?」

「将来のこととか、いろいろ・・・」

「だったら、結婚すればいいのに!」

いつもは独身主義者だと言っていたのに、その時の彼女は黙っていた。

それからしばらくして、彼女とは音信不通になった。
ほぼ2か月おきに1回はランチをしていたのに
お互い連絡をとることもなくなり
彼女は、すでに過去の人になっていた。

本当はお互い嫌いだったよね、私たち。
私はあなたにあこがれて、でも絶対に敵わなくて
自分がみじめで嫌な女になっていた。あなたと会うと。
だけど、もう会わなくていい。これで楽になれる。
そう思って平穏な生活を送っていたのに
Facebookで見つけてしまったのだ。

フシギなことに、彼女は名前が変わっていた。偽名?
苗字だけなら「結婚」したのだろう。
だけど、下の名前まで変わっている。

いや、そんなはずはない。別人か?
プロフィールの写真はどこからみてもさゆりだった。
まだ開設されたばかりのFacebook。

だけど、なぜ彼女に会ってしまったかというと
共通の友人がたくさんいたからだ。
その人間関係を見てもさゆりに間違いないんだけど。

もう名前なんてどうでもいい。
相変わらず女優オーラを身にまとい
人生の成功者として君臨する彼女は美しすぎた。
以前より若返っている。

写真修正した?なんて意地悪な妄想が浮かんだ。
何の根拠もない、ただの嫉妬心からそう思えただけ。

今の自分がメンタル弱っていて幸せを感じられないし
疲れているから、そんな風にしか考えられなかった。
睡眠不足がたたってお肌は荒れ放題。
とてもじゃないけど写真なんか公共の場に掲載できない。

彼女のことを全く気にしなくてすむようにしたい。
常に私の脳裏に焼きついている。
この醜い感情とともに、彼女の面影を切り捨ててしまいたいのに。